── “何も起きない物語”が、子どもの想像力を育てる理由
日本で最も有名な絵本のひとつに、
ぐりとぐら があります。
作者は
文:中川李枝子
絵:大村百合子
そして出版は
福音館書店。
1963年に出版されて以来、60年以上読み継がれているロングセラーです。
なつかしいですよね。
しかし、改めてこどもと読んでいると気づきます。
この物語、実はほとんど何も起きません。
ドラマチックな事件も、教訓も、感動的な成長もない。
それでも、なぜこれほど多くの子どもが夢中になるのでしょうか。
1 ぐりとぐらは「冒険の物語」ではない
物語は非常にシンプルです。
野ねずみの
ぐり と ぐら が森を歩いていると、大きな卵を見つけます。
それをどうするか考えた結果、
巨大なカステラを焼くことにする。
ただそれだけの話です。
普通のストーリーなら
- 危険が起こる
- 敵が現れる
- 成長する
といったドラマが用意されます。
しかし『ぐりとぐら』にはそれがありません。
代わりにあるのは
- 火を起こす
- フライパンを用意する
- 卵を割る
- ケーキを焼く
という、静かな作業の連続です。
2 子どもは「結果」ではなく「過程」を見ている
現代のコンテンツは、結果を急ぎます。
YouTubeでもゲームでも
- すぐ事件
- すぐ笑い
- すぐ刺激
が用意されています。
しかし『ぐりとぐら』は違います。
この本の魅力は
カステラが出来るまでの過程
です。
- 材料を用意する
- 火を起こす
- 焼き上がるのを待つ
この一つ一つの工程を、子どもはじっと見ています。
つまりこの絵本は
「観察する物語」
なのです。
3 「教訓」がないことの価値
多くの絵本には、わかりやすいメッセージがあります。
- 勇気を持とう
- 仲良くしよう
- 努力は大切
もちろんそれ自体は悪くありません。
しかし『ぐりとぐら』には、そうした教訓がありません。
ただ
- 森を歩き
- 卵を見つけ
- カステラを焼き
- みんなで食べる
それだけです。
しかし、この「何も教えない構造」こそが重要です。
子どもはここで
物語を自分の中で完成させるからです。
4 想像力は「余白」から生まれる
『ぐりとぐら』には余白があります。
たとえば
- なぜあの卵が森にあったのか
- なぜあんな大きなフライパンを持っているのか
- カステラの匂いはどんなだったのか
説明はありません。
だから子どもは
自分の頭の中で想像します。
現代のコンテンツが「全部説明する」のに対し、
この絵本はほとんど説明しない。
それが、想像力の余白になります。
5 静かな物語が育てるもの
『ぐりとぐら』を読み聞かせていると、面白いことが起こります。
子どもは
- ケーキが焼ける場面
- フライパンの大きさ
- 森の動物たち
などを、何度も見たがります。
つまりこの絵本は
「ストーリー消費」ではなく「観察体験」なのです。
6 なぜこの本は読み継がれるのか
1960年代に作られたこの本が、いまも読まれている理由は単純です。
この絵本は
時代の刺激競争から完全に離れている。
それだけです。
スマホも、動画も、流行も関係ない。
森で卵を見つけて、カステラを焼く。
ただそれだけの話。
しかしその静けさの中に、
子どもが世界を観察する時間があります。
7 読み聞かせは「教育」ではない
『ぐりとぐら』が教えてくれるのは
教育の方法ではなくて
むしろその逆。
子どもに何かを教えようとするより、
ただ一緒にページをめくり
- 森を見る
- 卵を見る
- カステラを見る
そんな時間を持つこと。
それこそが、読み聞かせの本質なのかもしれません。
もしあなたが
- 子どもの想像力を育てたい
- 観察する力を取り戻したい
- スマホの刺激から少し離れたい
と思っているなら、
まずは一冊の絵本を、ゆっくり読んでみてください。
もしかすると、子どもより先に
あなた自身の観察力が目を覚ますかもしれませんよ。
※補足
この記事の思想は、当サイトのメールマガジン
「静寂の主権:28日間の感性再生プログラム」でさらに詳しく解説しています。



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